土と癒し

大地との調和

人はなぜ病むようになったのでしょうか。それは誠に、自分が大自然の一部であることを忘れ、不自然な生き方をすることに慣れてしまったからではないかと思うのです。
そうして人は自らの生命のバランスを崩し、また自然環境のバランスを崩すようなことをも繰り返しています。
癒しを提供する者(ヒーラー)として、一番大切なことは、自らが大地の一部であることを思い出し、全体の一部としてのバランスを保つものとして過ごすことにあるのではないかと思います。
なぜなら人は土から生まれ、土に還るからです。
そのことを意識することは、自らを惑星意識に繋げ、さらには太陽(恒星意識)〜銀河意識〜宇宙意識に繋がっていくことになるのです。
アボリジニやネイティブ・アメリカン、古代のマヤの人々が素朴な生活を続けていながらも、大宇宙の叡智と繋がってこられたのは、自分たちが大地と一体であるということを理解していたからではないでしょうか。
自然農法は、大地の理(ことわり)を理解しなければ続けられません。
それは大地と調和することを学ぶことでもあります。
大地に生かされていることを学ぶ毎日です。

自然農法ってなに?

人参

自然農法とは、一切の農薬を使用せず、また肥料も使いません。自然の力だけで農産物を栽培する方法です。
その基本理念は「自然規範」であり、人間の都合によって生産をコントロールしようとする栽培方法とは異なります。
そういう意味では、化学肥料を使う慣行農法や、農薬も化学肥料も使わないけれど、生産効率を上げるために有機肥料を使う有機農法とは、理念が異なります。

不自然なものを避ける

自然規範という視点に立ったとき、農業の現場では様々な「不自然」な農法が実施されていることに氣づかされます。

たとえば農薬。化学農薬はもちろんのこと、有機農法などで使われる焼酎や食酢、木酢、牛乳などを用いることも、これに該当します。
次には肥料。化学肥料はもちろんですが、畜糞や油粕、ぬかなどを発酵させたぼかし、草木で作った堆肥などの有機肥料も不自然です。土壌のphなどを調整する石灰を撒くこともそうですね。

考えてもみてください、草木が生い茂る原野に大量の堆肥や農薬が投入されることは、自然ではありえません。それでも草木は立派に生い茂るのです。つまりそこには、人間都合(効率優先、経済優先)ではない、大自然の法則が働いているからに他なりません。
その大自然の法則を読み解いていくことが重要です。

自然農法は、そのような植物や土の持つ本来の力、もともと自然界に存在している力を引き出すことで、農産物を栽培することです。

では、自然農法では経済的に成り立たないのかというと、そんなことはありません。自然規範にたって農産物を栽培することで、自然はそれに答えてくれます。生産者は、自然の恵みによって生かされていることを実感することでしょう。
つまり、自然農法は自然との対話なしでは成り立たないということでもあります。


玉ねぎ

自然農法の農産物は安全です。

農薬も肥料も使わない自然農法では、畑に持ち込まれるものが格段に少なくなります。とくに近年アレルギーの原因として考えられている、化学物質の混入がほとんどなくなりますので、アレルギー反応の起きにくい食物としても注目されつつあります。

この点で畜糞を使った有機農法では注意が必要です。なぜならその家畜がどのように飼育され、どんなものを食べているのかは、ほとんどわからないからです。家畜が病氣にならないようにとワクチンなどの薬剤が投入されている場合が多いからです。その畜糞が堆肥にされ畑に投入されて行くときに、どんなことが起きているのか、正確に調べられたことはありません。

これは、同じ市内に住む、知り合いの自然栽培農家さんから聞いたお話ですが、重度のアレルギーのお子さんをお持ちのお母さんから、毎年お米の注文がくるそうです。その子は、そのお米ならアレルギー反応を起こさず、食べることができるのだそうです。ほかにも無農薬、無化学肥料の有機栽培米を試してきたそうですが、それでもアレルギーが出てしまうとのこと。肥料に含まれる何かが原因なのだろうと話していたそうです。もちろんこれは、ある意味極端な例ではありますが、そういう事実もあるという一例として挙げさせていただきました。

水田

自然農法の農産物は美味しい。

自然農法でつくられた農産物は美味しいと言われます。
その理由は、植物のもつ本来の生命力(生きようとする力)がいかんなく発揮されていることもそうですが、肥料をなくすことで、時間が経っても酸化しにくく発酵、熟成に向かうからだと言われています。実のところ、野菜の腐りやすさは肥料の量によると言われています。
大量の肥料成分(主にチッ素、リン酸、カリ)が与えられた野菜は早く大きく成長はしますが、酸化しやすく腐りやすくなってしまいます。
一方でこのような肥料成分が与えられることなく育った野菜は、成長速度こそ自然に見合ったものとなりますが、逆にしっかりと土中に根を張り、力強い姿になります。そして腐りやすいということはありません。鮮度保持実験をしてみるとその差は明らかです。それは植物が持っている生命力そのものに差があると言っても過言ではありません。

お米の場合は顕著です。肥料をたくさん与えられたお米は食味が低下してしまうこと(味が悪くなること)は、お米をつくる農家さんなら誰でも知っていることです。でも収量はあげたい。そこで登場するのが化学肥料です。お米の旨みを落とさずに収量を上げるには、チッ素分だけを含む化学肥料を適度に使うのがコツだと言われています。
自然農法では肥料を使いませんから、当然収量は少なくなります。しかし食味は最高です。しかも自然の力だけで、力強くそだっているお米です。生命力そのものに違いがあったとしても不思議ではありませんね。

米

近代の農業は、病害虫、雑草、収穫量との戦い

農作業は、耕すことと種をまいて苗をつくること、そして収穫することが主ですが、それで生活し、また経済的に自立するためには、売って十分な収入を得るだけの収穫量を得なければなりません。
しかし、それを難しくしているのが、病害虫と雑草の問題です。
健康で安全な農産物を作ろうと、自然農法や有機農法で新規就農を志す若者はたくさんいても、途中でやめてしまう人も多いのは、病害虫、雑草、収穫量の問題を解決できないでいるからです。

草取り

そこで近代の農業では、収穫量を上げるために化学肥料が用いられ、また雑草や病害虫を減らすために、様々な農薬が開発されてきました。
近年しばしば話題にあがる、遺伝子組み換え植物も、元をたどれば、「とにかくたくさん実がつく農産物が欲しい」とか、「野菜を栽培しながら同時に生えてくる雑草だけを除去したい、野菜には効かずに雑草だけに効く除草剤が欲しい」とか、「農薬を使わなくても病害虫に強い農産物が欲しい」などのリクエストに応えようとした結果でもあります。
しかしそういった、人間都合、効率優先、経済優先の考え方が、自然界のバランスを崩してしまっているという結果に、多くの人は目をつむったままです。

そして実際に、自然農法や有機農法を目指して、失敗し挫折する新規就農者も少なくありません。それは彼らにとって自然農法や有機農法は、病害虫も多く、雑草も多く、収穫量が少ない、手間ばかりかかってお金にならない農業だったからでしょうか?
いいえ、それは違います。自然農法を志して失敗する一番の原因は、「やっていることが自然規範ではなかった」からです。
もし、彼らが自然農法のなんたるかを理解し、自然規範に沿って農業を営むならば、「虫や病氣が寄り付かない健康な農産物」、「雑草の生えにくい土作り」、そしてそういった理由から「ロスがすくない十分な収穫量」と、「高付加価値」を得ることができたはずです。

土作り

基本は土作りにあり

自然農法においては、とにもかくにも土作りが重要です。それも自然規範に沿った、「不自然ではない土」作りです。これができれば、あとは簡単なのです。しかしこの最も基本的な部分がもっともおろそかにされているという現実を忘れてはなりません。

ある農家さんが「畑はゴミ捨て場ではない」と言われました。まったくその通りです。私たちは、なにやらもったいないという理由で、食物の残渣や家畜の糞、河原の土手の刈草や木々の剪定枝葉などを、リサイクルといって堆肥に加工し、畑の肥やしにしようとします。しかしその行為は自然規範から見れば不自然なんだということは、先にも述べた通りです。
そうやって作られた土は、自然の状態からはかけ離れてしまうため、結果として雑草が繁茂し、病害虫が寄り付きやすい恰好の場所となってしまうのです。これは、化学肥料を使っている畑でも同じことです。

自然農法を始めるにあたっては、畑において、まず過去の遺物を精算するところから始めます。そうして健康な本来の土の姿を回復させるのです。

健康な野菜には病害虫が寄り付かない

そうなんです。健康な土で育った健康な野菜にはほとんど病害虫が寄り付きません。農薬でも使ったのかと思うほど、見事に綺麗な野菜が育ち、収穫することができます。
よく、「虫が食っている野菜は安全で美味しい」などということを耳にすることがありますが、それは、農薬を使っていないという意味では安全ですが、美味しいかどうかは疑問が残ります。というのも、虫が食うのは不健康な証拠だからです。

健康野菜

健康な野菜というのは、基本的に弱アルカリ性です。一方で不健康な野菜は弱酸性になります。これが不健康な野菜が酸化しやすい理由です。
そしてもうひとつの理由は、腐敗をもたらすバクテリアは酸性を好むということと、虫は消化器官の構造上、酸性の食べ物、それもバクテリアによって水のようにドロドロと分解されやすいものしか食べられないという特徴があります。
それで、健康な弱アルカリ性の野菜には寄り付かないのです。虫はそれを食べても消化できないからです。

一方で健康な野菜には、発酵を促す乳酸菌や納豆菌のような人間に有用な菌がつきます。これらの菌もまた虫の嫌いな菌です。納豆菌のついたものを誤って食べた虫は死んでしまいます。ですから虫は絶対に食べようとはしません(有機農法で納豆菌を水に薄めたものを虫除けに使うのはそういった理由からです)。
また人間を含む草食の哺乳類の消化器官というのは、弱アルカリ性で、発酵しやすいものに適した作りになっています。ヨーグルトや納豆の大好きな人も多いですよね、味噌も醤油もお酒も発酵食品です。それらは人間に適している食べ物です。

つまり、健康な野菜は人間の食べ物であり、不健康な野菜は虫の食べ物。両者は本来バッティングすることは有り得ません。これを理解した時に、どのように土作りをしたらよいのか見えてきますね。

自然農法とは、単に健康な農産物を作るというだけでなく、人間の体に適した食べ物を作るということでもあるのです。

自然農法では雑草が少なくなる

一般的な農業の知識を持っている人は、このように聞くと驚くに違いありません。雑草はいたるところに生えるじゃないか、自然農法をしたら雑草が少なくなるなんてありえないと。
しかし、畑に何も作物を植えずにそのままにしておいて見てください。雑草はどのように生えてくるでしょうか?
雑草をよく観察していると、場所によって生え方も種類も違うことに氣がつくはずです。そしてその定位置はしばらくは変わりません。同じ場所に同じ雑草が毎年決まったように生えてきます。

これは、「植物は自分に合った土を作る」という自然の法則があるからです。ある植物にとって、それが生えている場所はその植物に適した場所であり、毎年それが強化されていきます。そうすると、ほかの植物はその場所になかなか生えづらくなってくるのです。
自然農法ではこの自然の働きを応用します。
まずその畑の土質にあった作物を選び、それを繰り返し作ります。そうすることで、その土地はその栽培する植物に合った土になり、ほかの植物が生えにくくなってくるのです。

しっかりと土作りができた、自然農法の畑において雑草が少なくなるのはそのような理由があるからです。

自然農法は、農薬も使わず肥料もいらないし、また雑草対策も楽になって手間も省け、虫もこないのできれいな作物が出来、しかも安全で健康で美味しいのですから、こんなに素晴らしい農法はありませんね。